本日は前回に引き続き「 Web エンジニアにおすすめの英語勉強法」ということで、私なりに思う英語勉強のポイントをお伝えできればと思います。 今回は「基本方針 / 戦略編」と「具体的アプローチ編」の 2 つあるうちの 2 つめ、「具体的アプローチ編」になります。 前回は英語学習に対する基本的な心構えや方針といったベースのお話がほぼほぼでしたので、今回は「じゃあ実際にどうやっていけばいいの?」「どういうのがすすめなの?」という具体的なポイントをご紹介したいと思います。
前提として、前回の記事の内容はひととおり押さえた状態で話を進めていきます。 また、私自身がそうであるように
- 日本の会社に勤める
- 一般の社会人が
- 特別な投資をせずに可能なこと
をご紹介したいと思います。
では実際に具体的な英語の勉強のやり方を時系列に見ていきましょう。
英語学習の進め方
基本的には前回ご紹介した基本方針に沿った形で進めていくのがよいかと思います。 以下、順番にポイントをご紹介していきます。
- 目的 / 目標を明確にする
- 現在のレベルを認識する
- 絞り込む分野を決める
- 伸ばしたいポイントに合ったものを選ぶ
- 継続するための戦略を作る
1. 目的 / 目標を明確にする
まずは英語を勉強することの目的と目標をはっきりさせましょう。 ゴールのイメージが明確であればあるほどその先の学習の時間が実りの多いものとなります。
たとえば、次のような質問にあなたは自分なりの答えを明確に言うことができるでしょうか。
- 「英語ができるようになったらどういうことがしたいのですか?」
- 「いま英語力が不足しているために生じている問題は何でしょうか?」
ここで例えば「海外旅行で現地の人と話せるようになりたい」という答えをしたとしたら、それは Web エンジニア(あるいはデザイナーやディレクター)としての英語ではなく、「趣味としての英語」をイメージしているということです。 もちろんそれはそれでありだとは思うのですが、英語の学習にはそれなりに時間がかかりますので、果たして本当にその目的でよいのか、そのために何十時間何百時間もの時間をかける価値はあるのかをしっかりと検討する必要があるかと思います。
よくある回答は「なんとなく、しゃべれた方がよさそう」「英語ができたら有利そう」という「なんとなく」というものです。 これには注意が必要で、学生さんなどであれば比較的時間の融通もききやすいのでこの姿勢でもそれなりに上達するかもしれませんが、社会人になって時間が限られる中で「なんとなく」やって上達することはあまりありません。
このあたりはその人その人の状況やキャリアプランによってそれぞれで、「こういう目的を立てれば OK 」という共通の答えがお出しできないところです。 どういう目的を持って英語を勉強するかは突き詰めていくとどういう風に働きたいか、どういう風に生きたいかというところにつながるので、ぜひ自分自身で考えてみてください。
いち参考として、最近の私の英語勉強の目的は「 Drupal.org の記事をもっと速く読めるようになる」というものです。 これができると Drupal についてのコンセプトや API の理解が早く快適になると思うので、私の仕事力と QoL のの向上に直接つながると思っています。
まずは自分が英語を学ぶ目的を明確にしましょう。
2. 現在のレベルを認識する
つづいて、自分の現在のレベルを正しく認識するということが必要です。 私はこの認識の重要性を知ってから英語力の上達スピードがぐっと早くなったように思います。
たとえば、「 Drupal.org の記事を速く読めるようになる」という目的があったときに「逆に、なぜいまは速く読めないのか」の理由を考えてみる場合を考えてみます。 速く読めない原因としては次のようなものが考えられるでしょうか。
- 単語がわからない
- 文法がわからない
- 慣用句がわからない
- 文章を目で読むスピードが遅い
たとえば、「単語はわかるのに文法がわからない」という場合には「単語力は 5 」だけど「文法力は 2 」という感じで自分自身の英語力を診断します。
また、文法がわからないといったときは、どの程度わからないのか。 基本文形が押さえられていないのか、それとも、基本文形は大丈夫だけど長い文章になるとわからなくなるのか。 「 XX 力が足りない」と一口に言ってもレベルによって適切な改善策は異なるため、このあたりも言葉で説明できるくらいに把握できるとよいでしょう。
このあたりでよくあるのは「つい見栄を張ってしまう」ということです。 「学校英語では成績は良かったけど実際の英語はダメ」「リスニングは大丈夫だけど話すのがダメ」という方はこのケースが多いように思います。 「英語ができる」というステータスではなく「英語で仕事力が伸ばす」ということを目的に、現状をなるべくありのままに受け止めるようにしましょう。
私の経験でいうと、リスニングについて「(自分は)もうある程度できるから後は数をこなせばいい」と思っていてなかなか伸びない時期がありました。 後から思えば、数をこなす以前の「基本の音の理解」が弱かったように思います。
3. 絞り込む分野を決める
次に、どういう分野を強化するのか、絞り込むべき分野を決めましょう。 ここは前回の「選択と集中」の件のとおりです。
最終的には複数の分野を押さえたいとしても、ひとつひとつ優先順位をつけてなるべく狭く範囲を絞り込むべきです。 一時期に強化するのはひとつかふたつの分野だけに限定しましょう。 狭い範囲に集中すればそれだけ努力の成果が見えやすくなり、継続しやすさにもつながります。
4. 伸ばしたいポイントに合ったものを選ぶ
ここまでできたら、ようやく具体的な勉強をスタートさせましょう。
口を酸っぱくして言っていますが、大切なのは
- 自分の目的と目標と
- いまのレベルに合った
- 効果的/効率的なアプローチを選ぶこと
です。 そしてもうひとつ大事なのは「自分に合ったものを選ぶ」ということです。
何も考えずに「とりあえず TOEIC 」「とりあえず単語帳」「ひたすら読む」「ひたすら聞き流す」というのはすべて前近代的な「うさぎ跳びトレーニング」に近いところがあります。 修行や精神修養としてやりたい場合はそれでいいのですが、エンジニアとしての技術力 / 仕事力の向上のために英語力を高めたいのであれば「適切なものを選ぶ」ということに注意を払いましょう。
自分に合ったものを選ぶという点も大切です。 ぐるなびの評価なんかと同じで、他の人がよいと言ったものが自分にとってよいものであるとはかぎりません。 どういうやり方であれば自分が楽しめるのか、集中できるのか、苦を感じずに継続できるのかというのを重視しましょう。 このあたりについても万人にあてはまる「共通の答え」はないので、一人ひとりが見つけるしかありません。
ただ、科学的な観点から見て効果が出やすいアプローチや教材というのはあるので、一定期間経て定評があるものについてはチェックされてみてもよいかもしれません。 私の経験上よかったものを少しだけあげてみます。
基本文法
- 中学校 / 高校の教科書
- 一億人の英文法 -- すべての日本人に贈る「話すため」の英文法 - 大西泰斗
語彙
- 中学校 / 高校の教科書
- 英辞郎 (新しい表現に出会う度に都度調べるときに)
リーディング
- 高校の教科書
- 学生時代の輪読会
- Stack Overflow
- GitHub
- 技術ドキュメント
- 技術ブログ
ライティング
- なし
リスニング
スピーキング
- 英語耳 - 松澤喜好
- 英語のバイエル - 大西泰斗 ポール・マクベイ
- 外国籍の人との実際のやりとり
5. 継続するための戦略を作る
使うものを選んだら、それをどうやって継続的に利用 / 活用するかを決めましょう。
英語の勉強にかぎったことではありませんが、「今度こそは継続しよう」と心の中で決心するだけでは多くの場合不十分です。 「がんばってやる」のではなく「自然と継続できてしまう」ような環境作りをすることが大切です。 具体的な方法としては、期日を決めて目標を設定するのでもいいでしょうし、互いに切磋琢磨できる勉強仲間を作る、毎日決まった時間に勉強するというのもよいかもしれません。 ツールを使って習慣管理したりレコーディングダイエットのように記録をつけるというのもよいでしょう。 とにかく自分なりの「継続しやすい方法」を見出して、それを英語の勉強にあてはめましょう。
勉強がうまく継続できない場合は、英語の勉強に失敗しているというよりは「継続すること」に失敗しています。 英語をどう勉強するかというのとはまた別の次元で継続のコツをしっかりと押さえておきましょう。
前回からの繰り返しになりますが、英語は音楽やスポーツに似ています。 アプローチさえ正しければ、あとどれだけ上達するかはそれに向き合う努力の量や時間に比例してきます。 上達スピードには個人差があるため、自分の英語力と隣の人のものを比べる必要はありません。 継続すればするほど伸びるのは間違いないので、周りの人との違いは気にせずに継続できる環境を作りましょう。
理解しておくべき重要なポイントは、「上達していくために必要な学習の強度や頻度については閾値がある」ということです。 私の個人的な経験では、週に 1 回の数時間の勉強では上達には不十分だと思います。 頻度や量が少なすぎると、「覚えたことが定着する前に忘れてしまって」の繰り返しであまり上達せず、モチベーションが下がってしまいがちです。 やると決めたからには、一定の強度と頻度以上を保つようにしましょう。 このあたりも個人差があるので、他の趣味や生活とのバランスを見ながらどこのあたりが最適かを見つけていきましょう。
以上です。
このあたりまで押さえられたら、あとは英語が上達するのは時間の問題かと思います。
あとは個別におすすめの方法をいくつかご紹介したいと思います。
おすすめな英語学習法
上で述べたような目的や現在のレベル、好き嫌いの相性に合うようであれば以下のような方法が個人的にはおすすめです。
身のまわりの英語比率を高める
ある程度のところまでこれば、英語に触れる量がそのまま英語力に直結してきます。 日常的に触れる身のまわりのものの英語比率を高めていきましょう。
Web エンジニアの方であればこのあたりのところが英語に変えられるかと思います。
- 仕事やプライベートで使うマシンの OS の言語
- 携帯電話やタブレットの言語
- ブラウザやメーラの言語
- Google など Web サービスの言語
調べ物や利用サイトを英語のものに変える
上の「英語比率を高める」ということと共通しますが、ふだんよく行う作業のベースを英語に変えることも英語の上達には有効です。
- Stack Overflow (英語版)を利用する
- Google などでの調べ物を英語でする
- Wikipedia は英語のものを使う
- 技術を学ぶときに YouTube の英語の動画や slideshare の英語のスライドを使う
- 技術ニュースサイトを英語のものに変える
プラスアルファで英語を勉強すると余分の時間を捻出する必要がありますが、「日本語でやっている作業を英語に変える」と最初はたいへんですがプラスの時間はそれほど大きくならずに済みます。 イメージは「英語の勉強」というよりは「英語での勉強」という感じでしょうか。 趣味としての英語とは異なり、学んだことがその日の仕事にすぐに活きるので、脳への定着効率もよいように思います。
「そもそも調べ物をしないんだけど...」という場合は、英語の勉強の問題というよりは仕事のスタイルの問題なのかなと思います。 Web エンジニアで調べ物を一切しないという人はいないと思うので、そのあたりは大丈夫ですよね。
私的なメモを英語で書く
私的なメモやドキュメントを英語で書くということも、英語力を高めるために有効です。
やはりインプットだけの勉強だけでは効率が悪いので、学んだことの定着効率を高めるために書く / しゃべるということが大切です。 とはいえ、業務上の重要なドキュメントをいきなり英語で書くわけにもいかないですし、相手がいると心置きなく失敗できないという人も多いかと思いますので、まずは私的なメモを英語に変えるということが有効かと思います。
単語帳などで受動的に学んだ英語よりも、「こういうことが言いたいんだけどどう言えばいいんだろう?」と能動的に考えて調べたことの方が定着しやすいので、一見効率が悪そうですが長い目で見ると効率が上がるかと思います。
余談: 英語を話すのが恥ずかしい?
英語の勉強に関して多くの日本人が感じるのが「間違ったら恥ずかしい」という恥ずかしさの気持ちでしょう。 そして、この気持ちが日本人の英語力上達を阻害している大きな原因のひとつなのは間違いないありmせん。
この記事を読まれているあなた自身はいかがでしょうか?
この恥ずかしさについては私自身が長年感じていたところでした。 「恥ずかしがっててもダメだよ」と言われても「そう言われてもなぁ...」となるのが人の性(日本人の性?)ですよね。
私が経験から思う恥ずかしさを取る方法は「気づく」か「場数を踏む」かのどちらかだと思います。 気づくというのは、「実はネイティブも他の国の英語スピーカーも誰もあなたに完璧な英語なんて求めてない」ということに心から気づくということです。 日本に観光に来た外国人が不完全な日本語をしゃべったとしても、私たちはその間違いや拙さを笑ったりはしません。 それと同じように、大多数の常識的な外国人は(日本人も)あなたが拙い英語を使ったとしても笑ったりはせず理解しようと努力してくれます。 人の文法や発音の間違いを笑って馬鹿にする人というのは、常識的 / 良識的な人のうちにはほとんどいません。 それでも気恥ずかしさがある場合は、あとは場数を踏んでいくと自然と解消されていくことを知っておけば心配する必要はないでしょう。
おすすめでない英語学習法
逆に、このあたりのやり方はあまりおすすめでないという方法もご紹介しておければと思います。
目的が漠然としたままの勉強
これは上述のとおりですが、目的があいまいだと本当にうまく行きません。 一般に大人になってからの他言語としての英語学習は「なんとなく」の勉強でどんどん上達していくようなものではないと思います。
目的があいまいだとポイントが絞れていないので伸びず、伸びないので達成感が薄くなり、達成感が薄いのでモチベーションが続きません。 明確な目的が定められないようであれば、本当は英語が必要ないのかもしれません。 英語の勉強をやるより緊急度や優先度の高いこと、好きなことをやった方がよいでしょう。 だらだら英語を続けてウン年経ったときには解釈の要らない実用レベルの人工知能ベースの翻訳サービスが出てきてしまう可能性も大いにありえます。
目的や状況の異なる人の勉強を真似る
これも上述のとおりですが、実際の学習法は目的やレベルに合ったものを選ぶべきです。
英語の勉強やダイエットなど「多くの人が挑戦していて失敗していること」については新しい手法のブームが次から次へと提案され消えていきます。 「しゃべれなかった私がこれだけでペラペラに!」という謳い文句はこの先もなくなることがないでしょう。 中にはよいものもありますが、玉石混交です。 新しい方法や他の人がうまく行った方法に飛びつくのではなく、自分視点でしっかりと見て
- それは私の目的に合っているか
- それは私のいまのレベルに合っているか
というのをじっくりと見極めましょう。 合うかどうかわからない場合には、周りの頼りになる人に相談してみるのもよいかもしれません。
TOEIC TOEFL 対策
TOEIC TOEFL 、英検などの試験対策はあまりおすすめではありません。 これは一概にいえないところではありますが、世間で重要視されすぎているきらいがあるのと、 Web エンジニアにとって試験対策は英語力上達の遠回りにつながりかねないので、あえて取り上げておきたいと思います。
理由は単純で TOEIC TOEFL はあくまでも試験であって、それで何点取れたからといって「仕事がこう変わる」というものではないからです。 「試験で何点取る」というのをいち指標として利用するのはよいですが、それを目的化しないように注意が必要です。
英字新聞
一般紙の英字新聞も Web エンジニアにはおすすめではありません。
これも一概にいえないところもありますが、こちらも一言で言ってしまえば Web エンジニアにとっては「非効率」だからです。 新聞に載る多種多様な話題の用語や言い回しを身につけるには相当の時間がかかります。 日本語の場合で考えてみれば当然なのですが、「新聞を読めるくらいの知識や知性を身につける」のには一定の価値がありますが、新聞を読めるようになったからといって何か特別な仕事ができるようになるわけではありません。 新聞は世間の動きを俯瞰するのには役立ちますが、他言語学習の教材には不向きだと思います。
以上です。
今回は英語の勉強の具体的アプローチ編として英語学習の進め方を、そして、個人的におすすめな方法、逆におすすめでない方法をご紹介しました。 英語学習の進め方としては次のようなステップをご紹介しました。
- 目的 / 目標を明確にする
- 現在のレベルを認識する
- 絞り込む分野を決める
- 伸ばしたいポイントに合ったものを選ぶ
- 継続するための戦略を作る
さらに個別具体的なお話もできそうですが、具体的になればなるほど汎用性も低くなると思うので、ここでのお話はこのあたりの水準のお話に留めておきたいと思いmす。
終わりに
前回も述べさせていただいたとおり、英語の勉強はマラソンのようなものです。 本格的にやる場合にはどうしても長期の取り組みになってきます。 長期の取り組みになればなるほど、戦略や作戦といった全体的な方針がモノをいうようになってきます。 ぜひぜひ骨太な作戦を作って、楽しみながら仕事に活かしながら取り組んでみていただければと思います。
最後にまた少しだけサービスの宣伝をさせてください。
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