こんにちは。全国のDrupalistの皆さんいかがお過ごしでしょうか。
猛暑からの台風、地震と、災害続きだった今年の夏(通常営業?)も終わろうとしていますが、そんな折にDrupalの世界では半年に一度のマイナーバージョンのアップデートがやって来ました。
以下、公式の文章を訳してきたのでアップデート内容を確認するのに役立てていただけると幸いです。
(「マイナーバージョンのアップデートって何?」という方は文末の訳者注をご覧ください。)
(翻訳開始)
Drupal 8.6.0の配布が開始されました
(翻訳元: Drupal 8.6.0 is available、翻訳元の作成日 2018年9月5日)
Drupal 8.6.0 では何が新しくなったのか?
今回のアップデートはDrupal 8史上最も大きなものです。Drupalをインストールする二種類の新しくて簡単な方法や、オンラインのフードマガジンを再現できるデモ、oEmbed
メディアのサポート、モノリンガルなDrupalサイトの安定したアップグレード、メディアライブラリーやワークスペースといった試験的モジュール、画面構成の劇的な向上、RESTに関する調整やテストの改善がこのアップデートに含まれます。
メディアへのoEmbedの埋め込みや新しい試験的メディアライブラリー
このアップデートではメディア用に安定した内蔵oEmbed
のサポートが追加されました。新しい「リモートビデオ」メディアタイプではあらかじめYoutubeやVimeoのビデオを埋め込めるように設定されています。(訳者注: oEmbedは様々な形式の外部コンテンツをウェブサイトに埋め込むための外部APIです。)
新しい試験的なモジュールでは、統合されたウィジェットを使って今あるメディアを眺めたり新しいメディアを追加したりできます。メディアライブラリはViews
を使っており、カスタマイズすることが可能です。
Umamiフードマガジンのデモが入っています
Drupal8.6.0は新しいデモのプロフィールやテーマをインストーラーに含んでいます。この美しく現代的なデモは、Umamiという仮想の料理サイトを使ってDrupalの性能を伝えてくれます。Drupalのデータモデリング、リスティング、ページ構築やコンテンツ管理を現代化する能力を見ることができます。サンプルとして記事の著者やマガジン編集者が作られ、Drupalコンテンツ管理インターフェースの別の側面を体験できるようになっています。このデモのあちこちを弄ってDrupalのコンセプトや技法を学んでみてください。
旧バージョンとの互換性やアップグレードパスが用意されていないので、このデモのプロフィールやテーマは実際の製品や開発サイトには使えません。将来的にはUmamiは多言語機能を備え、それが安定すればメディア処理機能やレイアウト機能などを追加していく予定です。
新しい試験的モジュール「ワークスペース(Workspaces)」が追加されました
このモジュールのコンテンツ編集機能は個々のコンテンツを編集・承認のワークフローに乗せたいときに素晴らしい能力を発揮します。「下書き」、「アーカイブ」、「掲載」のような「状態」をコンテンツ編集に取り入れて、どの役割を持つ人たちがコンテンツを一つの「状態」から「状態」へ移動できるか決めましょう。
複数のコンテンツ(2、3個でもいいし、数百個、数千個でもいいです)が一気にレビューされてデプロイされなければならないとき、この新しい試験的モジュールがなくてはならないものであることに気付くでしょう。複数のワークスペースを定義して、直感的なインターフェースを使いながらそれらのワークスペース間でコンテンツに変更を加えたりデプロイしたりしましょう。
既存の試験的モジュールのレイアウト能力が向上しました
試験的モジュール「レイアウトビルダー(Layout Builder
)」がディスプレイモードごとにカスタマイズできるようになりました(詳細画面vs検索結果など)。つまり、(従来のように)縦一列に連なった状態の
フィールドの順序を指定するのではなく、ダイナミックセクションでフィールドを配置できるようになりました。また、「グローバルなブロックリストには出てこないけど、特定のレイアウトだけで使う一回限りのブロック」を作ることができるようにもなりました。これは一つのランディングページでしか見ることのできないプロモーションなどを実装するのに便利です。
モノリンガルのサイトは安定的にアップグレードされ、マルチリンガルのサイトは改善されました
マイグレーションサポートは着々と改善されてきています。このアップグレードではMigrate Drupal
(Drupal 7.x以下のバージョンからのアップデート)とMigrate Drupal UI
(インターフェースのアップデート)の両方が行われました。これはつまり、あなたのDrupal 6サイトやDrupal 7サイトがモノリンガルであれば、このアップデートでサポートされている内蔵ユーザーインターフェースを使ってDrupal 8にアップグレードできるということです。
マルチリンガルサイトのマイグレーションは未だ実験的であり、現在はMigrate Drupal Multilingualモジュール
に包括されています。大きく改善された点はタイトルモジュールのサポートとともにDrupal 7のノードのエンティティ翻訳のマイグレーションをサポートしたことです。このモジュールが安定したものになるには、さらなるテストと足りない部分を埋める作業がまだ必要とされています。
また、過去6ヶ月でコントリビュートモジュールに対するマイグレーションも多数改善されました。Paragraphs
、Field
Collections
、Multifields
、Media
、Workflow
など人気のあるモジュールの多くが同じ水準でマイグレーションをサポートしています。
簡単で新しいDrupalのインストール方法
Drupalは多くの外部ツールに依存しています。素早く評価環境や開発環境を構築するのを劇的に簡単にするために、システム上にPHPしか必要がないquick-start
というコマンドが追加されました。PHPの内蔵ウェブサーバーとSQLiteデータベースを使い、このコマンドはDrupalを素早くセットアップして、いますぐ使えるブラウザーを開いてくれます。
k
$ curl -sSO https://www.drupal.org/download-latest/zip
$ unzip drupal-x.y.z.zip
$ php drupal-x.y.z/core/scripts/drupal quick-start
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Congratulations, you installed Drupal!
Username: admin
Password: NlH5cmfEzsbS3DSs
Drupal development server started: <http://127.0.0.1:8888>
This server is not meant for production use.
One time login url: <http://127.0.0.1:8888/user/reset/1/1525772031/pyK4gRFkQSGGKJk0GhZRucybqROZ2zvV85JwQiD3bFY/login>
Press Ctrl-C to quit the Drupal development server.
これでインストーラーはすでに存在する構成を認識し、その構成からインストール用オブションを表示してくれます。これは(コンテンツは無しの状態で)サイトを再構築するのに役立ちます。(Drushもdrush site:install
の新オプション--existing-config
でこの機能をサポートしています。)
MySQL 8がサポートされるようになりました
MySQL 8は過去のMySQLに比べ、いくつかのパフォーマンスが改善し、言語/照合のサポートを含むようになりました。Drupal 8.6.0はMy SQL 8をサポートしています。データベースのバージョンに関する必要条件を変更する予定は今の所ありません。
テストとREST周りも改善しました
DrupalのSimpletest
からPHPUnit
に全てのテストを移行する作業はほぼ完了しました。このアップデートで3215のテストがPHPUnitに移行され、68のテストがSimpletestに残ることになりました。JavaScriptのテストもテストを自動化するツールNightwatch.js
へのサポートを開始したことで大幅に改善されました。さらに、RESTリクエストの中でファイルをアップロードすることができるようになりました。今回のアップデートにはその他にもたくさんのバグ修正や改善点が含まれています。
今回のアップデートは「私」にとってどういう意味があるの?
Drupal 8 のサイトオーナー
バグやセキュリティの修正を受け取るために8.6.0にアップデートしてください。次回のバグ修正アップデート(8.6.1)は2018年10月3日に予定されています。
update.phpを用いて8.5.6から8.6.0にアップデートするのは8.5.5から8.5.6にアップデートするのと全く同じことです。Drupal 8.6.0はいくつかのプログラムの依存性に関してのアップデートを持っています。モジュール、テーマ、翻訳はこれら自身のアップデートの他にも今回のアップデートで変更された点に関連してアップデートが必要になる可能性があります。そのため、本番サイトをアップデートする前に慎重にアップデートをテストしてください。
2019年の3月からDrupalはPHP 7を必須とすることに留意してください。もしあなたのサイトがPHP 5.5やPHP 5.6を使っているのなら、アップグレードを計画するべきです。(ベストな結果を生むためにPHP 7.2にアップグレードすることを検討してください。) 詳しくはDrupalコアのPHP 5のサポート終了に関するお知らせをご覧ください。
Drupal 6とDrupal 7のサイトオーナー
Drupal 7はまだ完全にサポートされており、Drupal 8のマイナーアップデートを通じてバグやセキュリティの修正を受け取ることができます。Drupal 6のサポートは終了しています。今回のアップデートでは内蔵ユーザーインターフェースを使ってモノリンガルサイトのマイグレーションを行うことができます。多言語のサイトに関しては、テストを続けてどんな問題でも知らせてください。
翻訳、モジュール、テーマのコントリビューター
Drupal 8.6.0のようなマイナーアップデートは旧バージョンと互換性のある開発者用のAPIの追加や新機能を備えています。このアップデートにおける開発者にとっての改善点を詳しく知るには8.6.0のリリースノートをご覧ください。
マイナーアップデートは旧バージョンと互換性があるので、Drupal 8.5.xやそれ以前のバージョンをサポートしていたモジュール、テーマ、翻訳はDrupal 8.6とも互換性があります。しかし、新しいバージョンはテキストやユーザーインターフェース、内部APIやAPIの複製における変更を含みます。これはあなたの翻訳、モジュール、テーマにも小さな変更が必要である可能性があることを意味しています。
最後に、Drupal 8.6.0にコントリビュートしてくれたみなさん、ありがとうございます!
(翻訳終わり)
訳者あとがき
Drupal 8のバージョンは8.6.0のように3つの数字で表現され、左から順に「メジャーバージョン」、「マイナーバージョン」、「パッチバージョン」を示します。(このようなバージョンの表示形式をセマンティックバージョニングと言います。)
以下、それぞれのバージョンのアップデートが何を意味するか簡単に説明します。
- メジャーバージョンのアップデート(7.x→8.xなど)コアの大幅な変更を伴うもので、数ヶ月〜数年に一回行われます。Drupal 7のリリースは2011年1月、Drupal 8のリリースは2015年11月に行われました。Drupal9がいつリリースされるかはまだ決まっていないものの、Drupal 8はSymphony 3を部分的に使っているので、Symphony 3のサポートが終了する2021年11月までに行われる可能性が高いそうです。
- マイナーバージョンのアップデート(8.5.x→8.6.0など)は今回のアップデートのように、メジャーアップデートほど大規模ではないものの、コアの機能の拡張や新機能の追加、セキュリティの強化、バグ修理などを含みます。Drupal 8の場合は半年に一度行われ、このアップデートが行われると旧マイナーバージョン(今回は8.5.x)に対する追加のサポートは行われなくなります。
- パッチバージョンのアップデートは現行のマイナーバージョンに対するセキュリティの強化とバグの修正を行う小規模のアップデートで、それぞれ月に一回行われます。
本文中でも触れられていましたが、Drupal 7もDrupal 8と並行して公式にサポートされており、定期的にDrupal 8でいう「パッチバージョンのアップデート」にあたる、セキュリティ改善やバグ修理が行われています。
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