今回は Drupal での構築におすすめなウェブサイトの例をご紹介したいと思います。 今回の想定読者は「サイト構築を検討中のウェブ担当者」の方です。
本題に入る前にまずは、世の中のウェブサイトのタイプや Drupal の位置づけについてまずは少しおさらいしてみましょう。
世の中のウェブサイトのタイプ
一口に「ウェブサイト」といっても世の中にはさまざまなタイプのウェブサイトがあります。 建物に「商業ビル」「図書館」「住宅」「倉庫」などいろんなタイプのものがあり使われる素材や技術がそれぞれ異なっているように、サイトを構築するときに最適なツールも作るサイトによってまちまちです。
たとえば、こちらの記事では、サイトのパターンを「個人サイト」「企業サイト」「キャンペーンサイト」などに分類しています。 個人サイトと企業サイト、また、企業サイトとキャンペーンサイトでは、サイトに求められる目的も、必要な要件も、適切な構造やデザインも異なります。
Drupal の位置づけ
Drupal はウェブサーバやデータベースの上に乗る「アプリ側」のための技術ですが、アプリ側のツールには当然 Drupal 以外にもさまざまなものが存在します。 たとえば、静的な HTML や CSS 、 PHP や Java Python などのプログラミング言語、 Ruby on Rails や CakePHP などのウェブフレームワークなどが「ツール」としてあげられます。
そんな数あるツールの中での Drupal の位置づけを見たとき、 Drupal の位置づけは「汎用 CMS 」と「ウェブフレームワーク」のちょうど中間あたりに位置づけられるかと思います(ちなみに Drupal はそんな特徴から「 CMS + フレームワーク = コンテンツマネジメントフレームワーク」と呼ばれることもあります)。
ですので、もし企業様の中で「 Drupal をサイト構築で使おう」という意思決定が行われたならば、そこに至るまでには本来次のようなステップがあるはずです。
- (他のツールではなく)サイト / ウェブシステムを作ろう
- (静的ファイルだけじゃなくて)プログラムを使ってサイト / ウェブシステムを作ろう
- (スクラッチ開発じゃなくて)ウェブフレームワークや CMS を使おう
- ウェブフレームワークの場合: ( Ruby on Rails CakePHP Django など)数ある中で Drupal を使おう
- CMS の場合: ( WordPress Joobla Drupal Movable Type など)数ある中で Drupal を使おう
スクラッチ開発やその他ウェブフレームワークと同様に、大概のパターンのウェブサイトは Drupal で構築できてしまいます。 機能を一切持たない「ページだけのサイト」も「シンプルなブログ」も「 SNS サイト」も、ちょっとした「ウェブアプリ」なんかも Drupal で作ることができます。 それを可能とする豊富な基本機能と柔軟性が Drupal の特徴のひとつです。
ただ、「作れる」と「向いている」の間には大きな隔たりがありますので、企業のサイト構築 / 運用担当の方にはそのあたりのところを見極めていただいて、目的や状況に合った最適なツール選びをぜひしていただきたいと思います。
Drupal 構築に向いたサイトの例
では実際に Drupal で構築するのにおすすめなサイトの例をご紹介していきたいと思います。
1. コーポレートサイト(企業サイト)
企業そのものを紹介するためのコーポレートサイトは Drupal 向きといえるでしょう。 特に、サイトに組み込みの「ブログ」や「お知らせ」、見込み客からのコンタクトを受ける「お問い合わせフォーム」、トップページの「スライドショー」などの機能を盛り込みたい場合なんかには特におすすめです。 他にも、複数の言語圏を対象とした「多言語対応機能」を提供したい場合なんかも Drupal が強みが発揮されるケースでしょう。
2. 店舗 / 施設サイト
実店舗や施設の紹介のためのサイトも Drupal 向きです。 実店舗や施設のサイトでは、定期的に更新する「お知らせ」を載せたり、メンバーが不定期で入れ替わる「スタッフ紹介」のページやスタッフ持ち回りの「複数のユーザーが執筆するブログ」などを盛り込むことが多いかと思います。 また、店舗の雰囲気を伝える写真や動画などの「ギャラリー機能」、 Twitter や Facebook で紹介してもらいやすくする「ソーシャル連携機能」なども効果を発揮することが多いでしょうか。
他には「営業日カレンダー」や「予約申し込み機能」、「今週のメニュー」といった機能や、他店舗展開している企業様の場合は「店舗別のブログやお知らせエリア」を必要とすることもあるでしょう。 Drupal ではこれらの機能もコントリビュートモジュール / カスタムモジュールの組み合わせで比較的低コスト / スピーディに提供することができます。
一方で、店舗や施設のサイトでも静的ページとブログだけのシンプルな作りのものの場合は Jimdo などのお手軽タイプのクラウド CMS の方が費用対効果が高いことも多いかと思います。
3. 病院 / クリニックサイト
病院やクリニックのサイトも Drupal 向きといえるでしょう。 「営業日カレンダー」や「お知らせ」といった病院やクリニックのサイトでは必須ともいえるような機能も、「ウェブ問診票」や「PDF で発信する健康コラム」、「患者さん一人ひとりのためのログインページ」といったちょっと発展的な機能なんかも、 Drupal を使うとより低コストで実現することができます。
こちらも逆に、載せたいのは「診察科と営業時間、電話番号と住所だけ」といった静的なシンプルサイトの場合は、特に Drupal がおすすめというところはありません。
4. 自治体サイト / 大学や学校のサイト
都道府県や市区町村などの地方自治体、大学や学校など、管理すべきコンテンツのボリュームや種類の多いサイトの場合も Drupal はおすすめです。 特に、コンテンツの種類が多い場合やコンテンツを触る人の数が多い場合、投稿の作成から承認 / 掲載に至るワークフローが複雑な場合、多言語対応が必要な場合には特におすすめできます。
ハーバード大学やケンブリッジ大学、オックスフォード大学など欧米の有名大学で Drupal がこぞって選ばれているのがその証になるかと思います。
5. SNS サイト
運営企業以外の多くのユーザーが登録してサイトを利用する SNS サイト構築にも Drupal は力を発揮します。 マルチユーザーのログイン機能やユーザごとに異なるマイページ機能、使える機能が異なる複数のユーザータイプの作成など SNS サイトに必要な機能をひととおり Drupal のコアとメジャーコントリビュートモジュールで揃えることができます。
このあたりまでできてしまう守備範囲の広さが Drupal の良さでもあり、馴染みの薄い方にとっては理解を妨げるわかりづらいところでもあるかと思います。 極端な話、ごくシンプルな SNS サイトであればコーディング一切なしでサイトを立ち上げることもできます。
一方の「 Drupal 向きでないサイト」
「あれもこれも向いてます」という一方的なご紹介だとフェアではなく説得力に欠けるところがあるでしょう。 逆に Drupal 向きでないサイトのパターンもぜひご参考にしてみてください。 こちらは私なりに思う Drupal に向かないかなというサイトのパターンを上掲の記事中でご紹介しているのでよろしければどうぞ。
また、さまざまタイプのサイト構築にたいへん便利な Drupal ですが、デメリットがないかというとそんなことはありません。 ひとつの大きなデメリットは「日本人開発者が少ないところ」「開発技術の習得が大変なところ」です。 いろいろなことができるということは、その分技術者が使いこなせるようになるまでの学習コストが高いということでもあります。 開発会社ではない企業様の中で自前で Drupal 開発者を育ててサイト構築まで行う、というのはなかなか至難の業です。
また、開発を手助けするドキュメント類もあるにはあるのですが、ほとんど英語という点も日本人開発者にとってはツラいところです。
ただ、サイト管理者・サイト運用者という視点で見たときはまた別で、管理画面は CMS の中でも比較的わかりやすく、運用者の方が管理画面の使い方で詰まってしまうということはあまりないように思います(私が Drupal びいきになってしまっているところもあるので Drupal に甘いかもしれませんが、少なくとも「わかりづらい部類」には入らないでしょう)。
おわりに
以上です。 いかがだったでしょうか?
今回は Drupal での構築にうってつけのサイトの例を具体的に見てみました。 今回ご紹介したのは 5 つのパターンだけでしたが、他にも「ぜひ Drupal で!」とおすすめしたいパターンがいろいろあります。 またそのあたりも機会を見てご紹介していくつもりです。
ウェブフレームワークも CMS も世の中にたくさん存在するため、企業のウェブ担当者の方は開発会社に声をかける前にそのあたりの選択でまず頭を悩ませる、ということも多いかと思います。 Drupal はあまり合わないサイトもあるにはありますが、パターンにはまると大きな力を発揮してくれる CMS ですので、サイト構築を検討の方はぜひ上記の内容を参考にしてください。
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