本日は Drupal (ドルーパル)に興味をお持ちの Web 担当者の方を対象に「なぜ Drupal が選ばれているのか」というところをいくつかご説明してみたいと思います。

今回あげる理由はいずれもピンポイントのものであり網羅的なリストにはなっていませんが、「他の会社がなぜ Drupal に決めたのか」というのは Drupal を検討している方にとって少なからずご参考になるのではないかと思います。

本題に入る前に少しだけお断りを。 私たちスタジオ・ウミは Drupal 専門ショップとしてサイト制作において 95% 以上 Drupal を利用していますが(自社サイトや社内ツールでも利用しています)が、「すべてのホームページ制作プロジェクトに Drupal が向いている」「どんなときでも Drupal が選ばれるべき」とは考えていません。 世の中の道具が一般にそうであるように、「こういった目的/要件には向いているけど、こういった目的/要件には向いていない」という「向き/不向き」が Web サイト管理システム/ CMS にもあると思います。

世の中にはすべては評価しきれないほどたくさんの CMS やオーサリングツール、 Web アプリケーションフレームワークがすでにあり、また、新しいものが毎年のように続々と誕生しています。 ですので、今回あげていく理由に対して Drupal が必ずしもベストな選択肢にならないこともあるでしょう。 今回のものは、あくまでも他の企業さんが「選んだ理由」ということで受け止めていただけますと幸いです。

Drupal が選ばれる 6 つの理由

  1. 多言語/多国籍サイト
  2. SNS サイト + α
  3. EC サイト + α
  4. 柔軟なロール/権限/ワークフロー機能
  5. 名だたるサイトで利用されている信頼
  6. 継続的改善に向いた拡張性

#1 多言語/多国籍サイト

高品質な多言語サイトや多国籍サイトを費用対効果の高い形で作りたい場合、 Drupal はとても有力な選択肢のひとつです。

Drupal には多言語機能がコアに含まれており、多言語サイトにおいて一般に必要な機能をすぐに使いはじめることができます。 スクラッチやローレベルの Web アプリケーションフレームワークではなかなか真似のできない高品質な多言語対応機能を費用対効果の高い形で実現することができます。

Drupal を使えば、次のようなさまざまな多言語サイト要件に対応が可能です。

  • サイトのドメインによって言語を変えたい: en.example.com は英語、 ja.example.com は日本語など。
  • サイトのドメイン以下のパスによって言語を変えたい: example.com/fr はフランス語、 example.com/ja は日本語など。
  • ユーザーが利用するブラウザの言語設定を見てそれによって言語を変えたい。
  • ユーザーがサイト上で設定した言語によって日本語を変えたい。
  • ユーザーのロール(グループ)ごとに言語を変えたい。
  • 管理者は英語で、一般ユーザーは日本語でサイトを利用できるようにしたい。

#2 SNS サイト + α

SNS サイトを作りたい場合にも Drupal は有力な候補となります。

中でも Drupal がその力を発揮するのは、「そのサイトならでは」の機能がある他とはちょっとちがう SNS サイトです。 ごく標準的な SNS サイトであれば SaaS や軽量の SNS パッケージなどがベストな選択肢になることも多いかと思いますが、「品質の高いしっかりした SNS 機能 + そのサイトならではの特有の機能」を実現する場合には Drupal の豊富な基本機能と高い柔軟性が価値を発揮します。

SNS サイトを作る場合は「 SNS パッケージを入れたらそれで終わり」とはならずそのほとんどの場合でカスタム開発が必要にはなりますが、 Drupal を使うと画像や動画などを共有するサイト、他のユーザーにメッセージを送ったり「いいね」をつけたりできるサイトなどなど多様な要件の SNS サービスを Drupal は提供することができます。

特にセキュリティ面や安定性が重視される SNS サイトにおいては、巨大なコミュニティに支えられたオープンソースであるという点も大きなポイントになるでしょう。

#3 EC サイト + α

一味ちがう EC サイトを作る場合にも Drupal はよい選択肢となりえます。 Drupal + Commerce モジュールといった強力なコントリビュートモジュールを使うことで拡張性と自由度の高い EC サイトを構築することが可能です。

ただ、「商品が登録できて販売ができたらそれでいい」という場合には、テナント型の店舗や無料/安価のカートサービスがあるのでそちらを使うのがよいでしょう。 特に実店舗だけをやってきた小売事業者の方がはじめて EC を始める場合などには、まずはテナント型の店舗などで小さくはじめるのがおすすめです。 EC 運営には実店舗とはまた異なる知識が必要なので、まずは安価のカートサービスで始めてみて、知識がある程度身についた頃にはじめて Drupal などを使った独自店舗に移行しても遅くはありません。

逆に、「これまで EC をやってきたけれど、今の店舗機能に限界を感じる」「 EC 戦略や企画はあるのに、それをスピーディに実行できるプラットフォームだけがない」「 EC ショップを多言語化したい」という場合であれば Drupal + Commerce は自信を持っておすすめできる選択肢です。

#4 柔軟なロール/権限/ワークフロー機能

ユーザーのグループが複数あり権限設定を細かく行いたい場合、ワークフローを緻密に作り込みたい場合なんかにも Drupal は有力な選択肢となります。 Drupal は充実したロール/権限機能をデフォルトで備えており、また、やや複雑なワークフロー要件にも対応できる高品質なモジュールも充実しています。

たとえば、会員サイトでいうと「管理者 + スタッフ + 無料ユーザー + プレミアムユーザー」、売り手と買い手をつなぐマーケットプレースでいうと「管理者 + スタッフ + 売り手 + 買い手」というように、さまざまなグループが必要になってくるサイトもあります。 Drupal を使えば、品質の高いロールや権限、ワークフロー設定の備わったサイトを費用対効果の高い形で構築することができます。

特に、社内ツールとして Drupal を採用される方の選定基準はこのあたりにあるように思います。 実際に弊社では CRM ツール、ナレッジ共有ベースとして Drupal を活用しています。

#5 名だたるサイトで利用されている信頼

Drupal は名前をあげれば誰でも知っているような世界中の名だたるサイトで利用されている実績があります。

現在進行形でさまざまな企業がどんどん Drupal を取り入れていっているので、 CMS や Web アプリケーションフレームワークの選定の際に多くの方が心配になる以下のようなポイントをあまり気にしなくてもよいのが Drupal が選ばれる理由のひとつです。

  • 基本的な部分で致命的なバグがあるかも・・・
  • セキュリティメンテナンスが止まっていつかサイトを安全に使えなくなるかも・・・
  • サイトが大きくなったときにスムーズに拡大できないかも・・・

「すべてのソフトウェアには何らかのバグがある」と言われるとおり、 Drupal にもバグがないわけではありませんが、相対的に言うと、コントリビュートのルールやセキュリティ対応の体制が整っている Drupal は安心して使えるソフトウェアのひとつだと思います。

選定の一番の理由が「他のサイトが使っているから」では少し心配ですが、それでも、世界の全サイトの 2% で使われているという実績は大きな安心材料になるでしょう。

#6 継続的改善に向いた拡張性

サイトを公開後に分析や検証を積み重ね、継続的に機能追加やインタフェース変更を行っていきたい場合にも Drupal は有力な選択肢になります。

まだまだ数は少ないですが、中には Drupal の拡張性の高さと中長期的な費用対効果の高さ(サイトのライフスパン全体における費用対効果)をご存知の方もいて、そういう面から Drupal を選ばれている方もいらっしゃいます。

開発者的な視点でのお話にはなりますが、スクラッチ開発やその他の Web アプリケーションフレームワークに比べたときの Drupal の特長のひとつは「基本のお作法(=スタンダード)がよく整備されており、ちゃんとした会社が開発すればかなりメンテナンス性の高いサイトができる」という点です。 スタンダードはあくまでもスタンダードであり、各開発会社がそれをきちんと守るかどうかは会社しだいなのですが、しっかりした会社/開発者に頼みさえすれば、 Drupal サイトは各機能やデザインがきちんと切り分けられたとても拡張性が高く継続的改善にうってつけのサイトになります。

今やサイトは「公開したらそれで終わり」ではありません。 分析とトライアル/継続的改善こそが Web の世界で長期的に成功するための鍵ですので、そういう意味では「継続的改善に向いているのかどうか」というのは今後もっと重視されていくべきポイントのひとつです。

・・・以上です。 いかがだったでしょうか?

おわりに

本日は最近弊社にご連絡・ご依頼いただいた例を頭に思い浮かべながら、「 Drupal が選ばれる理由」というのをいくつか紹介してみました。 なるべく具体的な形でご紹介できるようにと努めてみたのですが、いかがだったでしょうか?

Drupal の特徴としては

  • オープンソース
  • 豊富な基本機能
  • 高い柔軟性
  • 高いセキュリティ

などが話にあがることが多いですが、このあたりのアピールポイントは他の CMS でも共通していることも多いのが実情です。 ですので、一般的な説明だと馴染みのない方にとっては抽象的でなかなかわかりづらいところかと思います。 今回はそのあたりのことを踏まえ、なるべく具体的なパターンを出しながらご紹介をしてみたいと思い記事を書きました。 Drupal をご検討される際のご参考になれば幸いです。

今後もまた機会を見つけて、「どういうプロジェクトが Drupal に向いていて、どういうものは向いていないのか」といったところをご紹介していきたいと思いますので、またご参考にしていただければと思います。

「こういう場合はどうなの?」などご質問などございましたらぜひお気軽にコメントください。


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