本記事は Drupal Advent Calendar 2022 の15日目の記事です。
Drupal 9 がリリースされた当時に Drupal 9 を動かすための環境要件・Linux ディストリビューション と言う記事を書きましたが、あれから2年半が経過してもうすぐ Drupal 10 がリリースされる予定なので、その記念に Drupal 10 版の記事を書くことにしました。前回の記事を書いた時から振り返ってみると PHP 7 が EOL を迎えたり CentOS のサポートが突如終了して驚いたことが記憶に新しいです。この記事では CentOS の後続となるディストリビューションや Amazon Linux の情報も加えることにしました。
ミドルウェア要件
次の表は Drupal 10 を動かすために必要なミドルウェアのバージョンです。内容を見るとPHPだけは特に最新のものを使わなければならない印象ですね。
種別 | ミドルウェア | 必要バージョン |
---|---|---|
Webサーバー | Apache | 2.4.7 |
Nginx | 0.7, 0.8, 1.0.x, 1.2.x, 1.8.x, 1.9.x | |
データベース | MySQL /Percona | 5.7.8以上 |
MariaDB | 10.3.7以上 | |
PostgreSQL | 12以上 | |
SQLite | 3.26以上 | |
PHP | PHP | 8.1 以上、8.1.6 以上を推奨 |
参考リンク
- Database server requirements | System requirements | Drupal Wiki guide on Drupal.org
- Drupal 10 minimum PHP requirement raised to PHP 8.1 | Drupal.org
- System requirements | Drupal | Drupal Wiki guide on Drupal.org
- Web server requirements | System requirements | Drupal Wiki guide on DVrupal.org
メジャーな Linux ディストリビューションごとのミドルウェアのバージョン
次の表は現在主流になっている Linux ディストリビューションがサポートしているミドルウェアのバージョンをまとめたものです。ディストリビューション選定の参考にしていただければと思います。おすすめに ○ が付いているものは公式のパッケージだけで Drupal 10 を動作させられます。
ディストリビューション | Apache | Nginx | PHP | MySQL | MariaDB | PostgreSQL | SQLite | EOL | 備考 | おすすめ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Ubuntu 22.04 LTS (Jammy Jellyfish) | 2.4.52 | 1.22 | 8.1 | 8.0.31 | 10.6.7 | 14 | 3.37.2 | 2027-04-21 *2 | ○ | |
Ubuntu 20.04 LTS (Focal Fossa) | 2.4.41 | 1.22 | 7.4 | 8.0.31 | 10.3.22 | 12 | 3.31.1 | 2025-04-02 *2 | ||
Ubuntu 18.04 LTS (Bionic Beaver) | 2.4.29 | 1.22 | 7.2 | 5.7.40 | 10.1.29 | 10 | 3.22.0 | 2023-04-02 *2 | ||
RHEL 9 / AlmaLinux 9 / Rocky Linux 9 | 2.4.53 | 1.20.1 | 8.1.8 | 8.0.30 | 10.5.16 | 13.7 | 3.34.1 | 2027-05-31 *2 | *1 | ○ |
RHEL 8 / AlmaLinux 8 / Rocky Linux 8 | 2.4.37 | 1.20.1 | 8.0.20 | 8.0.30 | 10.5.16 | 13.7 | 3.26.0 | 2024-05-01 *2 | *1 | |
CentOS Linux 7 | 2.4.6 | - | 5.4 | - | 5.5.68 | 9.2.24 | 3.7.17 | 2024-06-30 | ||
CentOS Stream 9 | 2.4.53 | 1.20.1 | 8.1.8 | 8.0.30 | 10.5.16 | 13.7 | 3.34.1 | 2027-05-31 | *1 | ○ |
CentOS Stream 8 | 2.4.37 | 1.20.1 | 8.0.20 | 8.0.26 | 10.5.9 | 13.7 | 3.26.0 | 2024-05-31 | *1 | |
Amazon Linux 2022 | 2.4.54 | 1.22.0 | 8.1.7 | - | 10.5.16 | 14.3 | 3.34.1 | 2026-12-31 | ○ | |
Amazon Linux 2 | 2.4.53 | - (1.16.1) | 5.4 (8.0) | - | 5.5.68 (10.5) | 9.2 (11) | 3.7.17 | 2024-06-30 | *3 |
- *1 DNFにより選択できる最新バージョンを記載しました。
- *2 有償の延長サポートサービスが存在するのでEOLを延ばせる可能性があります。
- *3 カッコ内の数値は amazon-linux-extras を利用すれば入れられる最新のバージョンです。ただし extras で入れたパッケージは同等のサポートが受けられないようですので注意してください。
- 太字で強調されている部分は Drupal 10 の要件を満たしていることを表しています。
- pkgs.org のデータを元に作成しています。内容の保証はありません。
- 2022年12月15日現在のデータです。システムによっては新たなバージョンが追加されている可能性があります。
参考リンク
サードパーティのリポジトリを利用する際の注意点
Ondřej Surý 氏やRemi Collet 氏が提供するサードパーティーのリポジトリを利用すると、最新のPHPをインストールして利用することができます。ただし、これらのPHPを利用した場合はディストリビューションのセキュリティアップデートの対象ではなくなってしまうので、基本的にはPHP公式のライフサイクルに準じたサポート期間となる点に注意が必要です。つまり公式パッケージののPHPを使えばディストリビューションのEOLまでサポートが続きますが、プライベートリポジトリのものを入れた場合は個別にEOLを気にしなければならなくなります。
Drupal 10 から搭載される自動アップデート機能を使うには Composer のアップグレードも必要
Drupal 10 では自動アップデート機能が搭載される予定ですが、この機能を利用するには Composer 2.3.6 以上が必要です。現行の環境で Drupal 10 に移行する場合は Composer も忘れずにアップデートしましょう。
まとめ
サードパーティーのリポジトリを使わずに Drupal 10 を動かすことができるディストリビューションは Ubuntu 22.04 と RHEL 9 系のみでした。これから新規で環境を構築するのであればそれらを選択するのが良さそうです。一方で現行環境を引き続き利用しつつ Drupal 10 にアップグレードする場合は、ディストリビューションのEOLなども考慮した上でサードパーティのリポジトリに切り替えるか検討した方が良いでしょう。
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