こんにちは。エンジニアの南です。 DrupalCon Asiaとしては2回目の開催となるDrupalCon Singapore 2024に、大野・菊池・南の3名で参加しました。

DrupalConとは

DrupalConとは、Drupal開発者、デザイナー・エージェンシー・マーケター・そしてコミュニティメンバーが集まり、最新の技術や知識を共有し合う場です。技術セッションや実践的なワークショップを通じてスキルを磨くだけでなく、パネルトークでは業界の最新トレンドや開発過程について語られます。また、アフターパーティーや展示エリアを通じて、企業同士のつながりを見つけることも可能です。 今回のDrupalCon Singapore 2024は、パークロイヤルコレクションマリーナベイシンガポールにて12月9日(月)から11日(水)までの3日間開催されました。 入場パス

Driesnote

イベント参加者が特に楽しみにしているセッションの1つに、Drupalの生みの親であるDries Buytaert(ドリス・バイタルト)氏によるDriesnoteがあります。

Driesnote

最新プロジェクト「Starshot」のポイントとなった4つイニシアチブが紹介されました。「Recipes」「Experience Builder」「Drupal.org」「ドキュメンテーション」の4つです。

特に「Recipes」と「Experience Builder」は、開発者でない人々にとっても革新的な技術と言えるでしょう。「Recipes」は、サイトの目的に応じたテーマやモジュール、設定、コンテンツをパッケージ化したもので、適切なレシピを選ぶだけで、基本構成が整った状態からコンテンツ作成を始められます。「Experience Builder」モジュールは2025年にDrupal CMSへ導入予定で、Form APIやReactを基盤としています。作成したナビゲーションやコンテンツのコンポーネントをドラックアンドドロップで配置することにより、ページ作成を可能にします。今までメニューやコンテンツの編集は、管理画面と描画されるページを右往左往していましたが、「Experience Builder」モジュールを使えば画面を切り替えることなくスムーズに設定できます。

企業ブース

セッションが行われている会場の外には約20の企業が出店し、オリジナルのDrupalグッズが用意され、自社のプロダクトについて説明される様子が見られました。企業のプロダクトをアピールする方法として、ある企業ブースで行われていたのは「新モジュールの体験教室」です。セッションで発表予定の内容をいち早く体験できるこの企画では、実際にモジュールを操作しながら開発の背景や使い方を学ぶことができます。単なるプロモーションではなく、教育的な側面もあり多くの参加者からも好評を得ていたように感じました。

企業ブース1 企業ブース2

その他のセッション

今回のイベントで私は合計12のセッションに参加しました。全体を通して、それぞれの得意分野を活かしながら「Drupalをより良くしていこう」という情熱を持って活動されている人の多さに驚きました。

新機能の内容や使用技術の説明だけではなく、完成に至るまでの課題や解決方法、決断までの意思決定のプロセスなど、開発者として感じたことを講演されていました。全てのプロダクトは「Drupalをより良いものにしたい」という共通の思いに支えられています。その熱意に感心すると同時に、時間とエネルギーをささげ積極的に貢献しようとする姿勢が今の自分自身に足りない要素だと痛感しました。

Experience Builderの説明

最新プロジェクト「Starshot」の制作秘話に関するセッションでは、デザインや機能、さらにはプロダクト名に至るまで、すべてがユーザーの声をもとに構成されていることが語られました。全ての意思決定は綿密なリサーチとデータに基づいて行われ、開発に携わるすべての人々が「正しいものを作る」という共通認識を共有していたのが印象的でした。セッションの締めくくりに語られた「目標は方向性を示し、結果を決めるのはプロセスだ」という言葉が、まさにこのプロジェクトを象徴しています。

Starshot制作秘話

個人的に印象に残ったのは、スリランカでDrupal開発とコミュニティを運営している方のセッションでした。スリランカでは非正規雇用の増加という深刻な社会問題がある中で、Drupalコミュニティ内で技術教育支援を行い、正規雇用の拡大に成功した事例が紹介されました。単なるコミュニティ活動にとどまらず、社会問題の解決にまで踏み込んでいる姿勢に感銘を受けました。コミュニティの力が社会に大きな影響を与えられることを実感した瞬間でした。

世界初のDrupal同人誌である「酒屋の娘、Webサイト制作します」の制作過程について語るセッションも行われました。このセッションでは、日本におけるDrupalの普及率の低さの一因として日本語での参考書の不足が挙げられ、それを解決すべく日本のDrupalコミュニティが書籍を作成・改良した過程が紹介されました。コミュニティ活動の良い点の1つは、制作過程でメンバー同士の連帯感・達成感が生まれ、仕事とは別の新たな自分の居場所を感じられることではないでしょうか。 Drupalが使いこなすまでのハードルが高いとされる一方でその壁を取り払おうとする取り組みや、初心者を温かく迎え入れる姿勢がコミュニティ全体に強く浸透している事例でした。

Splash Awards

Splash Awardsは、Drupalを使ったプロジェクトやデジタル体験の中で、特に優れた成果を上げた開発者・エージェンシー・貢献者を称えるための国際的な表彰イベントです。アジアにおける初の開催がDrupalCon Singapore 2024において実現しました。 受賞プロジェクトは以下の5つのカテゴリーに分かれ、それぞれの分野で優れたコンセプト・デザイン・実行力・影響力を基準に審査されます。

  • Corporate(企業部門)
  • Education(教育部門)
  • Government(政府部門)
  • Not-for-Profit(非営利部門)
  • Open Source(オープンソース部門)

さらにDrupal創設者であるDries Buytaert氏が与える特別賞「Best in Show」では、この夜のハイライトとなり、この日1番の盛り上がりを見せました。

アフターパーティー

1日目の全セッションの後は、参加者同士のつながりを深めるためのアフターパーティーが開かれました。 多民族国家のシンガポールらしく、さまざまな国の料理が提供され、料理を選ぶことすら楽しかったです。オフラインで他企業の方々と直接お話しすることで、人柄や価値観、普段の業務では見えない側面を知ることができ、貴重な交流の場となりました。また、このアフターパーティーはDrupal CMSリリース候補版の公開を祝うイベントでもあったため、会場全体が祝福ムードでした。個人的には普段なかなか接点のない社外の方々と仕事の話からプライベートの話までじっくり会話でき、その人の人となりを感じられた充実した時間となりました。

全体の感想

セッションの内容、Q&Aでの議論、シンガポールという地、全てがとても刺激的なイベントでした。アジア各国から集まったDrupalコミュニティの熱意に触れ、技術的な知見だけでなく普段では感じることのない開発者の「熱」を実感する機会となりました。

印象的だったのは、参加者同士が積極的にコミュニケーションを図り、カジュアルに技術的な会話をする姿勢です。こうしたオープンで活発な交流のあり方は、日本の文化ではあまり見られないものであり、大いに刺激を受けました。

次回のDrupalCon Asiaは日本での開催を検討されているようです。今回のDrupalCon Singapore 2024がとても素晴らしいイベントだっただけに、次回も必ず参加したい気持ちでいっぱいです。日本での開催であれば、より多くの国内コミュニティメンバーや企業が参加できるでしょう。Drupalのさらなる普及と発展につながる絶好の機会になること間違いなし。次回のイベントがどのような形で実現するのか、今から楽しみでなりません。

集合写真

DrupalCon Singapore 2024の様子は後日動画でアップされるようです。ぜひご覧ください。


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