はじめまして。2024年1月に入社しましたデザイナーの谷口です。
チーム最年長ながら、久しぶりの新人感覚を味わい日々奮闘しております。どうぞよろしくお願いします。

今回は自社のコーポレートアイデンティティー(CI)を策定するという大役を任されたお話をします。

コーポレートアイデンティティー(CI)とは

皆さんはコーポレートアイデンティティー(CI)というものをご存知でしょうか。言い換えると「企業の不易となる志」。不易とは、時代の移り変わりに左右されず常に普遍的であり続けるものを指し、それに対して、その時々の状況に応じて変化していく流行というものがあります。一本の木に例えるなら不易は幹や根の部分、流行は枝葉や花・実の部分になるイメージです。つまりCIとは、企業の本質を貫く価値観や使命を表現し、その企業のアイデンティティーを形作る要素となります。

木のイメージ

そんな会社の根幹を決める大仕事を託されたのだから、それはもう、あごガクガクです。

CI策定の目的と概要

そもそもなぜこのタイミングでCI策定に踏み切ったのか経緯を説明しますと、まず私が入社した頃にはすでに自社サイトをリニューアルすることが決まっていました。当然、デザイナーとして入社した私にはサイトデザインの依頼が来ます。
しかし、当時は分社化したばかりということもあり、新しいロゴはありましたが、コーポレートカラーやビジュアルイメージはまだありません。また、企業理念や経営方針など内向きの決まりごとはあるものの、対外的に掲げるようなものは特にないという状態でした。ここで一旦デザインはストップします。

本来、デザインはその企業の理念や価値観を反映し、視覚的に落とし込んだものであるべきです。しかし、この時点ではその根幹となる自社の強みや価値観などについて、個々のメンバーの心の中にぼんやりとした理解があるものの、チームとして確固たるビジョンが定まっていたわけではありませんでした。
そこで、より良いデザインを創り上げるために、この機会に思い切ってCI策定から始めることを提案してみたところ「よし、やってみよう」ということになりました。

私自身これまでにもVIに携わる経験は何度かありましたが、CIからというのは実は初めてでした。ただ、今までの職業柄コンサルに近い立ち位置だったため、ノウハウは多少ある方です。その今までの知識をフル活用し、私なりにいろいろ考えました。調べまくりました。そして、すでに弊社にはある程度の歴史や特色があること、今の会社規模、私の現状の立場なども加味して、全社員を巻き込んだ次のようなCI策定を推し進めることにしました。

  1. マインドアイデンティティー(MI)の策定
    • 全社員参加のワークセッションを行う
    • 社員一人一人の考える会社像や仕事に対する信念、将来の目標などを吸い上げる
    • その結果を元にしてミッション、ビジョン、バリューを考える
  2. ビジュアルアイデンティティー(VI)の策定
    • MI策定で決まった内容を元にコーポレートカラーやフォントなどビジュアルイメージを考える
    • ここでも全社員にフィードバックをもらいながら決定していく
    • 1、2で決定した内容を、当初の目的であるサイトデザインに落とし込む
  3. CI発表
    • ここまで決定した内容をプレゼン形式で全社員に向け発表する
    • 社員一人一人の目標や会社としての立ち位置が明確となり士気UPにつながる

全体的に「こんな会社にして行こう」ではなく「どんな会社にしたい」と問うかたちにすることで、社員一人一人がより意欲的に取り組み、決定した内容にも納得できるものになるのではと考えました。
ちなみに今回CI策定を進める上で、PARADOX創研さんの【コーポレートアイデンティティ(CI)とは?】会社のらしさを一瞬で伝えるアイデンティティの作り方という記事がとても参考になりました。

以下では各項目で行った内容をより詳しく説明します。

MI策定 〜全社員参加型のワークセッション〜

まずはCIの中で核となるマインドアイデンティティ(MI)を策定していきます。MIとは主に一般に言われるミッション(日々果たすべき使命)、ビジョン(実現したい未来)、バリュー(約束する価値・強み)にあたります。
先にも説明したようにCIは、時代に左右されない常に普遍的であり続けるものでなくてはなりません。よって、闇雲に考えるのではなく、まず会社の過去現在未来をしっかりと把握し、段階を追ってじっくりと導き出すことが大切だと考えました。

そこで私たちは、なるべく全社員が参加できるかたちのワークセッション計5回開催することにしました。
1回ではなく複数回、開催日の間をあける(我々は3〜4日ほどでしたができれば2週間くらいあけたかった)ことで、その時の思いつきや勢いで決めるのではなく十分に熟考できる期間を設けます。
また、当時の社員数は11名。図らずもサッカーチームの人数と同じです。これは話し合いや全体の意思疎通には丁度いい人数だと考えられます。

ただし、全社員をこれだけの期間拘束するのですから、会社としてはかなりの工数を割くことになります。この方法は経営側の理解が得られないと成り立たないということもお忘れなく。(我が社の経営陣の寛大な心に感謝)

第1回 メモリーワークセッション

ここでは全社員に次の事前アンケートの回答を順番に発表してもらい、その他のメンバーは発表内容についての感想や良かった点をFigJamを使い、ブレスト形式で付箋を貼っていきます。

  • 働いてきた中で、一番心に残っている仕事
  • ターニングポイントになった仕事
  • いまでの働くモチベーションの源泉になっている仕事
  • 伝説の仕事(ご自身の仕事以外で、すごいと感じた仕事)
  • 会社のこれからに期待すること

全員の発表後、FigJam上に出来上がった大量の付箋をカテゴライズし、キーワードを抽出します。そうすることで会社全体を通しての強みや大切にしている想い、何を重要視してるかなどが浮かび上がってきます。これは会社の現在についての理解を深めるのにとても良い材料となります。

第2回 経営者へのインタビュー

続いては経営者へのインタビューです。形式としては第1回と同じく事前アンケートの下、経営者代表の方に発表いただいている間、みんなで付箋を貼っていきます。インタビュー内容は主に次のようなことを聞いていきます。

  • 経営者の生い立ち
  • 会社の過去・現在・未来
  • 大切にしている想い
  • ターニングポイント
  • 現在のビジネスコンセプト
  • 今後描いていること

ここで社員から普段は聞けない質問などをするのもいいでしょう。我が社では創業から関わる常務へのインタビューをしたのですが、この日のためにスライドを用意し、生い立ちから今の会社に至るまでを語る素敵なプレゼンを披露していただきました。現社員の想いもそうですが創業者や経営者の想いを知ることはとても良いモチベーションにつながります。これにより会社の過去を知るいいきっかけになりました。

第3回 会社の未来年表をつくる

ここでもFigJamを使用し、全員で未来年表をつくっていきます。年表の構成は縦軸に社内社外世の中、横軸に1年後5年後10年後20年後を配置し、それぞれの枠に自分の思い描く未来を付箋で貼っていきます。
下の画像は、実際にFigJamで作成した未来年表のキャプチャです。

FigJamの未来年表キャプチャ

これにより社員一人一人の考えや目標が明確化し、会社の未来をより具体的に設計することが可能となります。

第4回 ミッション・ビジョン・バリューを考える

第1回〜第3回までで集めた材料を元に、会社の過去現在未来をしっかりと把握した上で、いよいよMIの中身であるミッションビジョンバリューを考えていきます。ここでも全員参加で話し合いたいところですが、流石に11人で内容を固めるのは難しいと判断しました。会社をよく知る長く在籍している方、物事に対して柔軟な発想力のある方、内容をうまく文章に落とし込めるライティング能力のある方など3〜4名を選出し、決めていく方向に変更しました。全員を3グループに分けて固めた内容を比較し合うという方法でも良かったのですが、ここまででも十分に全員の想いを集められている実感があったので、工数を減らすという選択をしました。(通常業務が忙しくなってきて時間があまり割けなくなってきたという一面もあります)

第5回 ミッション・ビジョン・バリューを決定する

最後に第4回で考えたミッション・ビジョン・バリューの内容を全員で確認し、内容に食い違いがないかを見ていきます。これまでに全員の声をしっかり内容に詰め込んでいるので、ここで大きな変更が出てくることはまず無いでしょう。我が社でも細かいニュアンスや言い回しを直す程度で、割とすんなり決定したように記憶しています。

そして、最終決定した我が社のミッション・ビジョン・バリューが以下になります。

MISSION(日々果たすべき使命)

確かな品質を裏付ける高度な「技術力」と「専門性」で世界をより良く変えていく

スタジオ・ウミは、常に進化し続けるこの世界において時代に応じたソリューションのエキスパートとしての技術を磨き続け、質の高いプロダクトを創造することで社会に還元していくことを使命と考えています。高い専門性を備えた技術力を武器とした本質的な価値の提供を通じてクライアント企業が抱える課題解決の一翼を担い、より良い世界の創造を目指してまっすぐに挑み続けます。

VISION(実現したい未来)

人に、技術に、品質に、まっすぐ

「人」とのつながりを大切に、クライアントに寄り添い、共に課題解決に真摯に取り組む顧客にとっての頼れるパートナーであること。新しい「技術」への挑戦を忘れず、時代の変化に合わせて常にスキルを磨き発展し続ける技術者集団であること。目先の利益にとらわれず、目に見えない「品質」に誇りをもって仕事に取り組むことができる職人であること。それが私たちらしさであり、今後も大切にしたいビジョンです。このビジョンを原動力に、人に、コミュニティに、地域に、社会に、豊かさと発展をもたらし、進化し続ける企業であり続けることを目指します。

VALUE(約束する価値・強み)

国内最高水準のDrupal開発の技術と経験

スタジオ・ウミは、Drupalの高度なスキルと知識を証明するアクイア認定資格の保持者数および最高位資格の保持者数が国内最多の企業です。長年の経験で培った高い技術とノウハウで、最適なDrupalソリューションを提供します。

一気通貫ならではの品質管理とスピード対応

Drupalに精通したディレクターとデザイナー、Drupal技術者で構成されており、Webサイト開発工程のすべてをワンストップで提供することで、高いクオリティマネジメントとスピーディな対応を実現します。

深い顧客理解に基づく本質的価値の創造

顧客伴走型支援をモットーにクライアントの抱える課題やビジョンに誠実に寄り添いながら、高い専門知識と技術を活かした「本質的な価値」の提供を通じて、クライアントにとっての頼れる存在であり続けることを目指しています。

VI策定 〜みんなの想いを込めた色〜

MI策定セッションで集めたみんなの想いや決定したミッション・ビジョン・バリューを元にビジュアルアイデンティティ(VI)を策定していきます。VIは主に会社のコーポレートカラーやフォントなどのビジュアルイメージを定めていく工程になります。ここでは会社のイメージをより明確にするため、180の形容詞・形容動詞から会社のイメージに近いものを選んでもらうパーソナルイメージアンケートを実施しました。そこから集計したワードをグルーピングし、日本カラーデザイン研究所のイメージスケールシステムを使用して3〜5のイメージワードを抽出します。そこからさらに自分たちのイメージに合うカラーを選出していき、最終的に決定したコーポレートカラーが以下になります。

コーポレートカラー図

メインカラーにはDrupalのイメージカラーでもあり、知的、先進、誠実、信頼等をイメージさせる青系を採用。そこに品質へのこだわりを持ち職人気質な社風に合わせて日本の伝統色である藍色に近づけた「ウミブルー」を作り上げました。また、サブカラー候補は同じ日本の伝統色であり職人が作り出す色として和紙の色を使い、さらに差し色として同じく伝統色の東雲色(朝日が昇る東の空の色)を使用。ウミの「らしさ」や「想い」を込めたカラー設定にしました。

この他にも会社推奨フォントの設定をしました。さらに、名刺封筒などの社内ツール、当初予定していたサイトリニューアルのデザインなどに、決定したコーポレートカラーやMI策定時に拾い上げてきた要素を落とし込んでいきます。

サイトのリニューアルデザインは近日公開予定なので乞うご期待。

CI発表 〜チームで仕事をするということ〜

そして、これら上記で決定してきた内容をCIガイドラインにまとめ、しっかりとドキュメント化し、私の役目は終了。と、安心していたのも束の間。今度はCI発表というかたちで、役員の方々も交えて、全社員の前で発表する場を設けることになるのです。社会人になってからはプレゼン経験などほとんどない、普段は「説明せずともデザイン見れば伝わるだろ」くらいのスタンスで仕事していた私にとってはかなり大きな試練です。やるからにはスティーブ・ジョブズばりのドヤ顔でスピーチしてやろうと息巻いて準備しましたが、そんな急にプレゼンが上手くなるわけもなく。当日の発表は、かなりグダグダ。自分のふがいなさに落胆する羽目となりました。ただ、今回CI策定を通して私の中に芽生えたチーム愛のようなものは伝わったかなと思っています。これで少しでも社内の士気が上がるのであれば大成功だったのではないでしょうか。

ちなみに発表当日に合わせて、VIの社内ツールの1つとしてイベント参加時などで利用できる自社公式オリジナルTシャツとステッカーも制作。そのTシャツをプレゼン中に上着の下に忍ばせ、良きタイミングでバサっと披露するというプチサプライズを試みたのですが、この時は多少盛り上がっていた気がします。

CI発表風景

最後に、CI策定を終えて

これでようやく私の役目は終了。思えば社内に対するマインドセットと社外へ向けたブランディングが目的だったはずのCI策定は、いつしか新入社員の私がスタジオ・ウミとそのメンバーに魅了されていく研修期間になっていました。MI策定では普段の業務では気付けないメンバーそれぞれの人となりを感じられたり、会社の成り立ちや経営者の想いまで知ることができたり。VIを考えるときにはすでにこの素晴らしいチームをどう上手く世に伝えようかというマインドになってました。それもそのはず、この会社に出会うまで私は10年以上フリーランスとして一人で業務をこなしていたのですから。知らず知らずのうちに苦楽を共にする仲間と、そのチームプレーを欲していたのでしょう。この歳にして自分が意外と熱い人間だってことに気づかされました。そんな経験ができた3か月間でした。

そして最後に、この素敵なチームに出会えたことへの感謝と、私の好きなアフリカのことわざで締めさせていただきます。

「早く行きたければ一人で、遠くへ行きたければみんなで」
If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.

屋外集合写真

いかがでしたでしょうか。
少し長文になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。皆さんの中にもまだCI策定をされていない、もしくは検討されている企業の担当者や事業主の方いらっしゃいましたら是非お勧めいたします。そのときは、この記事が皆さんにとって何かの一助となれれば幸いです。


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