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本日は「 Web エンジニアにおすすめの英語勉強法」ということで、英語の勉強の仕方や考え方を少しご紹介できればと思います。 今回と次回の 2 回に分けて「基本方針 / 戦略編」と「具体的アプローチ編」を書いていきたいと思います。 今回はそのうちの前編「基本方針 / 戦略編」です。

少し抽象的なお話にはなりますが、こと語学に関しては長期的な取り組みになる場合が一般的かと思います。 「魚を渡すのではなく釣り方を伝える」というところが大事かと思いますので、今回はまずはやや抽象的な基本方針のお話を。

本来社内メンバー向けの内容のつもりでしたが、せっかくですのでここに書き留めておきます。 私が過去にやったことをただご紹介するのではなく、おすすめでない方法も含めてなるべく効果的 / 効率的な勉強法をご紹介できればという思いで書いていきます。

エンジニア寄りの内容にはなりますが、デザイナーの方、ディレクターの方にも参考にしていただける内容ではないかなと思います。 どなたかのご参考になれば幸いです。

先にお断りしておきますと、私は英語がそこまで堪能というわけではありません。 大体次のような感じでしょうか。

  • 英語のプロやネイティブのレベルからはほど遠いところにいます。
  • 学生時代の専攻も外国語学ではありません。
  • 留学の経験、外資系勤めの経験もありません。
  • 英語でのプレゼンや議論の経験はありません。

この意味で、多くの「英語が気になる日本人」の方と同じ境遇にいると思っています。 一方で次のようなところもあるので、何らかの部分で英語を学びたい方のヒントとなることがお伝えできるかなとも思っています。

  • センター試験英語では間違い 1 ~ 2 問ぐらい。
  • TOEIC 800 点ぐらい。
  • Web 関連の技術文書なら英語でも抵抗はない。
  • 知人や同僚との会話であれば英語でも抵抗はない。

以下、このぐらいの英語力の人の意見だということを心に留めておいていただければと思います。

あと、私は弊社大野同様の効率オタクで「いかに小さな努力で最大限の成果を出すか」をよく考えています。 英語の勉強でもそのあたりのことを考えているので(笑)、「英語も効率よく学びたい」という方には何らかのヒントを得ていただけるのではないかと思います。

ちなみに今回は「趣味としての英語」ではなく、あくまでも「仕事力 / 技術力を高めるための英語」というところが前提となっています。 趣味としての英語と仕事に使うための英語とでは基本的な考え方もアプローチもまったく異なると思うので、今回は仕事の方にフォーカスしている点もお断りしておきます。

英語を学ぶメリット

まずはそもそものところで英語を学ぶメリットについて。 英語の勉強の「 HOW 」(方法)を押さえる前に「 WHY 」(なぜ勉強するのか)を先に押さえておきましょう。

「英語はできないよりもできた方がいい」というのは多くの日本人が感じていることだとは思います。 ただ、英語の勉強には努力が必要で、時間的にも金銭的にも負担があるのも事実です。

実際、英語はやった方がいいのでしょうか。 どうなのでしょう?

結論から先に言ってしまうと、この疑問の最終的な結論は「あなた次第」です。 エンジニアとしてどうなりたいのか、数年後や将来どういう仕事をしたいのか。 その考え方によって英語の必要性は異なってきます。

ただ、私たちスタジオ・ウミの場合は英語ビジネスを今後さらに伸ばしていきたいという思いがあり、バイリンガルのスタッフが増えていくことを期待しているので、スタジオ・ウミで働くかぎりにおいて英語力の向上は収入アップにつながる大きな要素ではあるかと思います(笑)

あくまでも一般論ですが、 Web エンジニアにとって英語力を高めるメリットには次のようなものがあるでしょう。

  • 英語のドキュメントがスムーズに読めるようになる
  • 英語のコミュニティや窓口を利用できるようになる
  • コードの読解が早くなる
  • コードの記述が早くなる

ただこれらはあくまでも一般論なので、「自分にとって英語を学ぶメリットは何だろう?デメリットは何だろう?」というのをまず考えるのが第一かと思います。 メリット / デメリットを考慮した上で、結論として英語以外の別の何かを選ぶのも決断としてはアリだと思います。 英語マストではありません。

英語学習のポイント

では実際に英語学習のポイントを見ていきたいと思います。 ここは具体論ではなく、どちらかというと戦略的なお話をします。 以下 3 つのポイントをご紹介します。

  1. 目的/目標とレベルに合った効果的/効率的なアプローチ
  2. 選択と集中
  3. 実践と継続

1. 目的/目標とレベルに合った効果的/効率的なアプローチ

まずいちばんに大切なのは、目的/目標とレベルに合った効果的/効率的なアプローチです。

ここには 3 つの意味合いが含まれています。

  1. 目的/目標を明確に決めること
  2. 現在のレベルを正しく把握すること
  3. 目的/目標とレベルに合ったアプローチを選ぶこと

これは一言で言ってしまえば「英語学習の戦略を決めよう」ということになるのですが、多くの方が見過ごしているポイントでもあります。

目的や目標が明確になればなるほどアプローチが具体的になりますし、周りの人からの協力も得やすくなります。 さらに、成果も出やすく効果測定もしやすいので、モチベーションも保ちやすくなります。 後述する「実践と継続」とも関連してこのあたりは最も重要なポイントです。

例をあげてみます。 たとえばいまいまの私の場合であれば次のとおりに考えています。

  • 目的/目標: Drupal.org のドキュメントや書籍をスムーズに読んだり翻訳したりできるようになる。特殊なことば以外では辞書はひかずに済ませたい。
  • 現在のレベル: Drupal.org に出てくる文法は OK 。単語は 9 割方辞書なしで理解できる。

これに対して、以下の 3 つのアプローチを私が考えているとします。 あなたは、この中でどれがいちばん有効だと思いますか? どれを私におすすめしてくれますか?

  1. 海外ドラマをひたすら見る
  2. 大学センター試験用の英単語帳で勉強する
  3. Drupal.org のページを直接読む

いかがでしょう?

私が考える最も有効な選択肢は「 3. Drupal.org のページを直接読む」です。

理由としては、 1 はリスニングや日常的な語彙を学ぶにはよいと思いますが Drupal.org のドキュメントを読むというのからはかけ離れています。 2 は基本を確実にするという意味ではよいのですが現在のレベルに合わない感じがします。 要は 1 は目的/目標との整合性に欠けており、 2 は現在のレベルとの整合性に欠けています

重要なのは、目的/目標とレベル、両方と整合したアプローチを選ぶということです。 大事なことなのでもう一度。 重要なのは、目的/目標とレベル、両方と整合したアプローチを選ぶということです。

たとえ目標が同じでもレベルが違うと効率的なアプローチは異なってくるという点に注意が必要です。 仮に私が「 Drupal.org に出てくる単語の 5 割ぐらいはわからない」というレベルにあれば、 3 をやるのはかえって非効率で 2 がベストな答えとなるかもしれません。

この例では答えはやや明白ですが、こと自分自身のこととなると目的や現在のレベルにそぐわないアプローチを選択してしまうということもあるのでぜひ注意してください。

たとえば

  • 文法がしっかり押さえられていない中で英字新聞をひたすら読む
  • 話す力を鍛えたいのにひたすら単語帳をやる

といったことをするとあまり効率がよくありません。

2. 選択と集中

ふたつめのポイントは選択と集中です。

英語を勉強するとき、そもそもの部分で次の認識が薄い方が多いように感じます。

  • 他言語学習は大変
  • 時間は限られている

他言語学習は大変

多言語の学習はそれなりに大変です。 着実な成長をするにはそれ相応の努力と時間を必要とします。

統計的な数値はわかりませんが、私の感覚値でいうと TOEIC スコアを 700 から 800 に 100 点あげるのに 100 ~ 200 時間ぐらいかかったように思います( TOEIC スコアのためだけのテクは使わない形で)。 100 ~ 200 時間というのは字面だけ見ると一見短いのですが、ふだん仕事をしている社会人の方にとってはとても長い時間です。 平日 1 日 1 時間休まず毎日勉強しても年間でやっと 250 時間いくかいかないかぐらい、なのでいかに長い時間かがご理解いただけるでしょう。

時間は限られている

もうひとつは、英語の勉強に使える時間は限られているということです。 これは一般的な日本企業に勤めている想定です。

上述の平日 1 日 1 時間というのは、学生さんなら工夫次第でどうにかなる場合も多いと思うのですが、社会人でこれを継続するのはなかなか大変です。 Web エンジニアであれば、仕事以外の時間はまったく Web に触れず、勉強もせず、というのは長い目で見て持続可能なキャリアではないでしょう。 英語以外にも何らかの勉強や情報収集をしている方が多いかと思います。 それに加えて英語を勉強する形になるので、使える時間は自然と限られてくるでしょう。

他言語学習はそもそも大変ということと時間は限られているということ。 これらの事実を踏まえて、英語の勉強では「あれもこれもマスターしたい!」と欲張ってはいけません。 「読み書き、聞き話し、まんべんなく伸ばしたい」は時間がたっぷりある場合を除いて避けた方がよいでしょう。

ぼんやりとした「英語の勉強」ではなく、「英語の基本文法の勉強」「英語のサーバサイドの技術文書を素早く読むための勉強」といった形で分野を小さく小さく絞り込みましょう。 領域を小さく絞れば絞るほど上達も早く、モチベーションも上がります。 不思議なもので、ひとつの分野である程度いけるようになると成功体験として自信がつくからか、ふたつめ、みっつめの分野への展開はどんどん早くなります。

Web エンジニアにかぎっていえば、特定の分野の技術文書であれば使われる単語や語彙の数は数百から数千に限られるかと思います。 「インターネット」や「ブラウザ」「インタフェース」のように、日本語としてすでにご存知の単語も多いかと思うので、実は、未知の単語を数百押さえてしまえば単語面はカバーできてしまいます。

余談: 英語は子どもだってしゃべれるからかんたん?

これは余談ですが、「外国では子どもだってしゃべってるんだから語学はかんたん」ということばを聞いたことがあるかもしれません。 あれは甘いウソなので、騙されないようにしましょう(笑)。

理由としては、英語の環境で生まれ育つ子どもと私たち(多言語として英語を学ぶ人)との間には 2 つの大きなちがいがあるからです。

  1. 言語学習の感受性期(臨界期)
  2. 英語学習にかけられる時間の長さ

英語を母語として学ぶ場合と多言語として学ぶ場合とは原則まったくの別物として捉えるべきです。

余談: 聞き流すだけでペラペラ?

もうひとつ余談を。 世の中には「 1 日数分聞き流すだけでペラペラに!」といった謳い文句もありますが、あれも原理的に言ってありえないと言っていいでしょう(笑) これは話としては「泳いだことがない人も、水には一切浸からず水泳選手の動画だけを見ればバタフライでスイスイ泳げるようになります」というのと同じようなお話です。

3. 実践と継続

3 つめのポイントは実践と継続です。

英語は、実践してそれを継続していかないと伸びていかない。 こちらも考えてみれば当たり前なことですが見過ごされがちなのでここで押さえておきたいポイントです。

これを考える場合、他言語の習得をどういう比喩で捉えるかがとても重要です。

他言語の習得というのは他のことでたとえるとどういう活動に近いでしょう。 次の 3 つのうちでいうと、あなたはどれに近いと思いますか? 少し考えてみてください。

  1. 国語や社会などの他の文系分野
  2. スポーツや音楽
  3. 歩くこと

視点によって意見はさまざまかとは思いますが、私は他言語の習得というのは「2. スポーツや音楽」に近いものだと思います。 意味合いとしては、「暗記やロジックも大切だけど、それと同じくらい、実際に頭や身体を動かして練習をし、ときには試合をすることが大切」という意味です。

スポーツや音楽では、水泳でもピアノでもギターでも、実際に身体を動かさないことには上達は期待できません。 「教科書ばかり読んで手を動かさないで上達する」なんてことがありえないのはスポーツや音楽に関しては誰もが頷くところかと思いますが、こと語学においては国語や社会と同じように手を動かさずに上達できると考えている方が意外に多いようです。

ただ、身体を実際に動かすことが大事とはいっても、 3 の「歩くこと」ほど感覚的なものでもないと私は思います。 母語あるいは母語に近い形で英語を学ぶ場合は話が別ですが、大人になってから他言語という形で英語を学ぶ場合はそれと同じようなアプローチはあまり効果的ではありません。 他言語を学ぶ場合は、きちんとロジックを押さえながら、科学的なアプローチでトレーニングをするのが効果的な道です。

そして、何より大切なのは継続です。 リーディングにせよリスニングにせよ、できれば毎日、毎日は難しくても週に何回かを長い間継続することが大切です。 スポーツや音楽でも同じですが、月に 1 、 2 度だとやはり成長はゆっくりとしたものになるでしょう。 習慣として定着させ、「やらないと気持ち悪い」くらいのところまで行くのがよいでしょう。

Web エンジニアの場合でいえば、たとえば次のようなことができるでしょう。

  • 毎日必ず英語サイトのドキュメントを読む
  • 毎日必ず英語でメモを書く

(ただしこれはあくまでも一例で、上述のとおりまず先にあるべきは目的/目標と現在のレベルです。 目的/目標と現在のレベルに整合したアプローチを選びましょう。)

また、何かを継続するということは「他の何かをやめる」というでもあります。 他の何かをやめずに新しい習慣を追加するというのはほとんど失敗するといってもよいので、英語の代わりに何をやめるのかを具体的に決めてから取り組みましょう。

気をつけたいのは、趣味や休息の時間をただ削るというアプローチを採ってしまうことです。 趣味や休息も、これまで継続的に行ってきたということは日々の活力を得るために必要な重要な活動のひとつだったということです。 それらを断って、たとえ短期的には我慢することはできても、長い目で見ると必ず破綻してしまいます。 何を削るのかは慎重に選びましょう。 日本人はときに美談に捉えがちですが、睡眠時間をむやみに削るというのは余命を削る下策中の下策なのでやめましょう(笑)

以上です。

今回はまずは英語の勉強の基本方針 / 戦略編として以下の 3 つのポイントをご紹介しました。

  1. 目的/目標とレベルに合った効果的/効率的なアプローチ
  2. 選択と集中
  3. 実践と継続

いずれも見過ごされがちではありますが、知っている人は知っている英語学習の重要ポイントだと思います。 何らかのご参考 / ヒントにしていただける部分はあったでしょうか?

終わりに

今回のような戦略的なお話は少し退屈にも思えますが、英語の勉強はマラソンのようなものです。 本気でやる場合には必ず長期的な取り組みになってきます。 ですので、話題の勉強法やツールに飛びつく前に「急がば回れで戦略をきちんと押さえておく」というのが長期的に見て楽しく順調に上達できる勉強の王道だと思います。

今回は戦略 / 概念的なお話でしたので、「 Web エンジニア」らしい部分があまりお出しできませんでした。 次回の「具体的アプローチ編」ではそのあたりも少しカバーできるのかなと思いますので、またご参考にしていただければと思います。

詳しくは読ませていただいていませんが、これらのページを斜め読みしたかぎり私の主張は次の方々のものと似ています。 本気で英語を学んでいきたい方はご覧いただくとよいかもしれません。

こちらの書籍も戦略的なお話が書かれておりおすすめです。 その筋では有名なようです。 こちらもよろしければ。

・・・最後に少し宣伝をさせてください。

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